
「塔」は16番目のカードで、22枚ある大アルカナカード中(もっと含めると小アルカナも合わせて)最悪のカードと思われているようです。
「悪魔」の束縛は強力です。
縛られているのに気が付かないのですから、また機が付いていても気が付かない振りをしているのも、悪魔の誘惑のなせる業です。
では「愚者」はどのように悪魔の鎖から脱出するのでしょう。
「愚者」は「塔」が表わす突然の変化によって、その束縛から解放されるのです。
塔の壁は、あたかも自分を守るようですが、逆に言えば制限された空間で甘んじるようなものです。そこには成長が無いわけです。堅い壁を破壊するような強力なエネルギーが必要です。
激しい変革は、まさに「愚かなる自分の無知」を気が付かせるため・・無知から既知へ向かうためには必須です。
あまりに自己中心的になって、本来の目的を忘れてしまっている場合、この破壊力は必要となります。
大きなエネルギーは壁を破壊し、多少の痛みを伴うかも知れません。
しかし、後に気がつくことで、この経験が自分の成長に必要なものであることを知ることになります。
「塔」のカードは一般には「凶札」と思われています。確かに人間が造り上げた天に届かんばかりの塔が、神の怒りによって破壊される場面を描いています。まさに旧約聖書の「バベルの塔」を描いているようです。

しかし「塔」は人間が自ら造り上げた「制限」とも言えます。堅い岩で囲い、外敵から身を守ろうとしますが、逆に、そこから抜け出さないと新たな創造ができません。悪魔の束縛は、人間の可能性を制限するものです。成長を停止させてその場に留めようとします。誘惑に負けると、そのほうが楽に感じられ、悪魔の束縛に甘んじてしまいます。
ですから、「塔」のカードに描かれる徹底的な破壊が必要なのです。
「塔」の絵柄には、「破壊」「逸脱」「変化」を象徴しているのがわかります。
●危険・自己・災難・火災・落雷など不慮の事故や、怪我や病気、トラブル全般を指します。
●自分のおごりによる失敗。精神の堕落。自己のエゴイズムによって地位を失う。転落や降格。良くない事情で家を出る。経営の失敗 。ここでは、原因は自分自身の「無知」「堕落」があることに注意してください。
●「無責任」による誤解。悪い噂で失墜・信頼を失う。
●損失・赤字・紛失・盗難
●入院。警察問題に巻き込まれる。脅し。恐ろしい出来事全般。
●夫婦のちょっとしたことでの破局。恋人とのトラブル。悪いうわさでつぶれる縁談。危険な人物と付き合う。
「塔」は逆位置に出ても解釈としては変わらないカードですが、その「破壊」「ダメージ」「損傷」の度合いが弱くなるイメージです。

●小さくて済んだ危険。小事故。トラブルがあっても解決の見通しがきく(でもまだ解決はしていない)
●トラブルは去るけれど後遺症が残る。心の傷が残る。病気は治ったが完治ではない。
●自分の間違いに対しての非難。犯人扱いされる。疑いの目で見られる。罠に注意
●まだ完全に去っていない危険。油断できない未来。警戒措置が必要。
●喧嘩は収まったが不信感が残る夫婦や恋人関係。意地を張る恋人。円満には過ごせない夫婦。
とにかくこの「塔」は、絵の中心に巨大な天にも届きそうな塔が立っており、雷や霰で塔が破壊されて中の人物が落下している様子が描かれています。
旧約聖書でも有名なバベルの塔そのものです。神に近づこうと傲慢な考えを持った人間は、高い塔を建築しますが、神の怒りを買ってしまう物語です。この結果、人類は互いに別々の言語でしゃべるようになり、意志の疎通ができなくなりました。
「傲慢さ」「堕落」「エゴイズム」が、他者とのコミュニケーションや関わり合い全般に破壊をもたらすイメージでしょう。「塔」が出た場合は、質問者は現在の自分を見つめなおし、自己変革を成すべきでしょう。